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7/197/207/21

2008.07.21 ライブエリアレポート

3日間を通して、ほぼ「晴れ、時々曇り」。そんな当たり前の空の様子が、何よりも嬉しいことに思えてくるap bank fes'08の最終日。
昨年は結果的にたった一日だけの開催日となってしまったことで、数々のドラマやエモーションが押し寄せてきた最終日だったが、今年はフィールドもバックエリアも3日目ならではの「フェスの日常」の表情を見せて、新たな一日の始まりを迎えようとしていた。もっとも、アーティストエリアの一角、ホスピタリティルームでは、朝からBank Bandの面々が集まってリハーサルを行っていた。リハーサルといっても、そこにあるのは部屋の隅のキーボードひとつだけ。その前に小林武史が座って、Bank Bandのメンバーと細かい確認を繰り返している。いわば、音を出さない脳内リハーサル状態。このレベルのミュージシャン達だからこそ可能な、音楽による高度なコミュニケーションの一端を見せてもらった。そんな脳内リハーサルを終え、バックエリアを闊歩する櫻井和寿には3日目の疲れの片鱗もうかがえない。喉の調子を整えるように常に歌いながら歩いているその姿は、まさに全身音楽家そのものだ。

さあ、準備は万端。2008年のap bank fes、最後の一日が始まる!

ヨースケ@HOME

この日のオープニングアクトは、この7月にメジャーデビューを果たしたばかりのヨースケ@HOME。
根っからの陽性キャラクターで間口の広いポップミュージックを鳴らす期待のニューカマーだ。ほとんどのオーディエンスにとって彼の音楽に生に触れるのはこれが初体験となるのと同時に、ヨースケ@HOMEにとってもこんなにたくさんのオーディエンスの前で歌うのは初体験。でも、ハワイやシカゴで音楽修業をしていたというその海外仕込みの度胸の良さを発揮し、「クラップユアハンズ!エヴリバディ!」という掛け声ひとつでオーディエンスとコール&レスポンスを生み出していく。セネガル人のパーカッション・プレイヤーのリズムと、70年代ソウルミュージック風のエレピの音が気持ちいい!

「去年は台風で出られなくなっちゃったんで、フードエリアで歌ってたんです。その時にやった曲を今日も歌います。最近モノがいっぱい溢れていて何を選んでいいかよくわかんないじゃない?この曲はそういうことについて書いた歌です」

そんなMCに続いて演奏された“What do you want?”は、「今、自分の周りにあるものの中で、本当に必要なものは何か?」について立ち止まってちょっと考えることを提案した、ap bank fesのメッセージとも見事にリンクする、一日の始まりにうってつけの楽曲だった。


「緊張は全然しなかったです!昨日会場に前のりして、ずっと見てたんですけど、ステージもお客さんもみんなすごく楽しそうにやってたから、自分も『全然大丈夫だ!』って(笑)。みんな盛り上がってくれて、ようやく一年越しの夢が叶いました!」

♪チャリと海と太陽と
♪what do you want?
♪パノラマ
♪そしたら僕は旅にでかけよう

Bank Band

そして、小林武史のゆったりとしたピアノのイントロに導かれて始まったBank Bandの1曲目はもちろん、昨年のap bank fes ‘07で初披露された「この日、この場所」のためのテーマソング“よく来たね”だ。昨年ステージ上で櫻井から、この曲には「晴天ヴァージョン」と「雨ヴァージョン」があることが告げられたが、今日はもちろん「晴天ヴァージョン」!

よく来たね いろいろあったんだろう? 悲しいこと 嫌なこと 辛いこと だけどこうしてまた会えたんだよ 笑顔をいっぱいつくろう

ap bank fesという「約束の場所」に響き渡る、「約束の曲」。
でもそれだけじゃない。この曲は、人と人が出会い、そしてまた再会するということの奇跡を祝福した、大きな大きなメッセージソングだということに気づかされる。

♪よく来たね

GAKU-MC

「Bank Bandです!最高の1日、早いかもしれないけど最高の夏にしたいと思います!最後まで目一杯楽しんでいってください。早速素晴らしいアーティストを紹介したいと思います。僕の大親友です。しょっぱなから汗かきますか?紹介します!GAKU-MC!」 そんな櫻井のアナウンスに誘われてステージに飛び出してきたGAKU-MC。「この日を想像して書いた曲から始めます!」と“世界が今夜終わるなら”でキックオフ。今やap bank fesにとってなくてはならない存在となったGAKU-MCの、このフェスへの大切な思いがストレートにライムに綴られた1曲だ。
「待った? どれくらい待った?1年待った?2年待った人も、3年待った人もいるよね?いよいよ今日が08最終日!やっとチケット取れたよねー!!チケット10倍だって!ここにいるのが約3万人!これなかった人はその10倍!30万のどちんこがプルプル言いたがってたはずですよ!だから、今日は1人で10人分ののどちんこを背負った気持ちで声出せますか!?ぷるぷる言わせてくれますかー!お前達ののどちんこは、僕ののどちんこより大きい声が出せますか!?最後までよろしくお願いします!!」
そんなGAKU-MCならではの熱いMCとともに繰り出されたのは、もうBank Bandにとってもお馴染みとなった“昨日のNo、明日のYes”。さあ、暑くて熱い一日が本格的に始まった!

♪世界が今夜終わるなら
♪昨日のNo,明日のYes

平原綾香

「みなさん、こんにちは!雨降らないでよかった!去年、実は私もap bank fesに出る予定だったんです。しかもシークレットで、“Jupiter”を1曲だけ歌いにくるはずだったんですが、台風によってシークレットが本当にシークレットになっちゃいました(笑)。だから今日はここにこれて本当に嬉しいです!」
ステージ上でそんな笑うに笑えない裏話が明かされた平原綾香のステージ。でも、おかげで今年は“Jupiter”だけでなく3曲も堪能することができたのだから悪いことばかりじゃない。だんだんと真夏の真昼ならではの熱気に包まれてきたつま恋のフィールドに、彼女の声が涼しげに響き渡る。
生で聴く平原綾香の歌は、一般の「和み」とか「癒し」のイメージに反して、とても凛々しい、まるで凱歌のような強さを湛えているが、「昨日からこの会場に入っていて、昨夜は打ち上げにも少し参加したんですけど、櫻井さんが『明日、いっぱいストーカーのようにハモるからね』って爽やかな笑顔で言ってくださいました(笑)」とMCで彼女も言っていたように、曲の盛り上がりと共にそんな彼女の声に櫻井の声が包み込むように被さっていく。この日だけの特別な「強くて優しい歌」がそこにはあった。
最後に歌った“孤独の向こう”の前に、平原綾香はこんなふうに語っていた。「孤独っていう字を辞書で調べてみたら、ただひとりぼっちなだけじゃなくて、同じ志を持つ人がいないことをいうそうです。私は“Jupiter”という曲で、4年間ずっと『ひとりじゃない』っていうことを歌い続けてきましたが、今になってやっと、孤独の向こうに見える何かを歌えるようになりました」。Bank Bandの力強い演奏と共に、彼女は確かに「孤独の向こう」にあるものをオーディエンスに見せてくれた。

♪Jupiter
♪星つむぎの歌
♪孤独の向こう

KREVA

「すっげぇ!! ファンが増えてる!! イケる!(笑)。よっしゃ行こう!」。
1曲目に“アグレッシ部”をかました後のKREVAのその一言がすべてを表していた。ap bank fes 06から3年連続出演、07年春のAP BANG! 東京環境会議も含めると4回連続出演と、もうすっかり常連となったKREVAだが、オーディエンスの熱もその度にぐんぐん上がってきている。鳴り止まない歓声を受けて、「その声は曲の中でもらうぜ!」と言葉でのコミュニケーションの大切さをラップした次の曲“あかさたなはまやらわをん”に突入。
かっこいい!櫻井もMCで「昨日も『あいつはすげぇ』『あいつはちょっと特別だ』って話になりました」と紹介していたが、やっぱり「あいつ」=KREVAはすげぇ。
曲間、即興で“ストロングスタイル”の一節をラップし始めた時にヴィジョンに映し出された櫻井の驚いた顔が、何よりもその「すごさ」を雄弁に語っていた。

「このフェスに出たことがきっかけで作った曲があって、最後にやるような曲じゃないのかもしれないけど、この曲を是非やらせてくれって言って選ばせてもらいました。まず自分が気持ちいいことが、最終的にみんなの気持ちいいに繋がっていったらいいよなって。みんなが気持ちよくなっててもひとりだけ気持ちよくなかったら、それって気持ちよくないじゃん? まずは自分。まず自分の中に溜まってるため息、CO2かも知れないけど思いっ切り吐き出せ! そんなの俺が吸い込んでやる! お前の二酸化炭素で生きてやるぜ!」というアニキっぷりを発揮した頼もしいMCの後に披露した最後の“ため息はCO2”の頃には、会場全体はすっかりKREVAの野外コンサート状態になっていた。

「実は今年が一番緊張しましたね。もうゲストで来ているというよりも、毎年出てるっていうことからくる責任感みたいなものが自分の中に生まれていて。でも、そういう緊張感っていうのは、いい緊張感だから、終わった今となっては結果的にすごくよかったですね。単に慣れることで和らいでいって、『あー、みんなで一緒にやれて楽しいな』っていうんじゃなくて、そこに緊張感が常にあるっていう、そういう存在でいれたらなって思ってます」 「今まではBank Bandの音に自分のラップが乗っかってるって感じだったけど、今日はBank Bandと一つになってメッセージを発信することができたと思う。そう感じることができたのが、一番嬉しかったですね。Bank Bandと一緒にやることで、自分の曲の持ってるメッセージがよりみんなに届いていく感じがしましたね」

♪アグレッシ部
♪あかさたなはまやらわをん
♪ため息はCO2

My Little Lover

そして続いて流れてきたのは、あの聴き覚えのあるイントロ!“Hello Again〜昔からある場所〜”だ!
「ap bank fes初の参加になります。よろしくお願いします!最後までみんなも楽しんでいってください!」とakkoがステージから語りかける。意外といえば意外な、マイラバ、初のap bank fes登場の瞬間に、27000人にオーディエンスは大いに湧いた。
アルバム『アイデンティティ』にも収められている最新シングル“イニシャル”では、akkoの声と小林武史のメロディの不変の相性の良さを存分に発揮。照れくさそうに、でも楽しそうにピアノを弾く小林武史の表情がヴィジョンに映しだされる。
「どうもありがとう!私は植物が大好きでお家でたくさん育ててるんですけど。最近、全部の植木にいっぺんに水をあげようとすると10リットル以上お水を使ってしまうんですね。これってエコ的なのかなとか、逆に思い始めてしまって。そういう矛盾だったり疑問だったりを持ちつつ、今も大切に緑を育てているんですけど。エコって、本当に一つだけのことが正解っていうものじゃないじゃないですか。さっきKREVAも言ってましたけど、地球に負荷のない自分にとって気持ちいいところを見つけて、そこを自分なりに掘っていくともっともっといろんなものが見えてくると思うので。私も常にそんなことを意識してやっていきたいと思っています。最後に聴いてください。“evergreen”」
言わずと知れた、マイラバの代表曲の一つであり、ファーストアルバムの表題曲でもあるこの曲。“evergreen”というのはポップス用語で「永遠に色あせない曲」という意味だが、まさにその通りの名曲であると同時に、永遠に(=ever)この星が緑(=green)であることを願っているかのような、この曲の内包していたメッセージが、十数年の時を超えてフィールドに響き渡った瞬間でもあった。

♪Hello,Again〜昔からある場所〜
♪イニシャル
♪evergreen

Bank Band

気持ちいい風が吹いて過ごしやすかったこの日も、正午をしばらく過ぎてから、初日同様に、太陽が燦々と照りつけるようになっていた。第一部の終わりに、Bank Bandによる「あの曲」が演奏された。

櫻井_「あっという間だ。あっという間に3日目の1部が終わってしまいました。1部の最後の曲です。
去年台風で2日間このイベントができなかったんですけど、ちょうどその時新潟のほうでは地震が起こっていて、すごく多くの被害が出ていたんですが、その時の自分は自分達のイベントのことばっかり、台風の動きばっかり気にして、地震のことはほとんど無関心でいました。で、3日目にイベントが終わって、その翌日に中止になった時に販売する予定だった余ったたくさんのカレーを、小林さんが震災のど真ん中のところに行って食事に困ってる人達に持っていっていて。僕はイベントのことばっかりで、打ち上げで大騒ぎして2日酔いの状況で、小林さんが行ってることを知らなくて、イベントが終わった次の日に新潟に向かったと聞いて。僕はその時ちょっと心苦しかったんですけど、その報告を受けたあと、今から歌う曲の歌詞を作りました。歌の中に雪とか春とかいう言葉が出てきます。今は夏で、あったかくて季節外れかもしれないけど、雪は雪のことではないです。当然、春は春のことではないです。今ここで、夏に、僕らが音楽鳴らして歌って、すごく幸せな時間を過ごしてますけど、どこかできっと誰かが雪に覆われたような寂しい時を過ごしてるんだろうと思います。
この幸せな時間を過ごせることへの感謝と、それからどこかで冬を過ごしている人達のことを考えつつ、思いつつ1部の最後にこの曲をお届けします。“はるまついぶき”」

♪はるまついぶき

Bank Band

約70分の休息を挟んで始まった第二部。ステージには櫻井と小林と、Bank Bandのギター小倉博和。彼らが静かに鳴らし始めたのは、Mr.Childrenの名曲“優しい歌”だ。原曲のメロディとメッセージの素晴らしさを抽出させたようなアンプラグド・ヴァージョンが、真夏の緑の大地に響き渡る。

♪優しい歌

櫻井_「どうもありがとう!だんだん暑くなってきたけど、もう関係ないね!最後までよろしくね!今の曲の中にもありましたけど、誰かのために小さな火をくべるような優しくて気持ちいい歌、音楽をまだまだたくさんみんなの心に響かせて行きたいと思います。めいっぱい感じていってください」

絢香

第二部の最初のゲストは絢香。昨年に続いて、ap bank fes、2年連続出演だ。ap bank fes はオーディエンスだけでなく、出演者にとっても何か大切なものをここから持ち帰ることが多いフェスだとよく語られるが、絢香のこの1年間の活躍は、まさにそれを証明するかのように充実したものだった。“おかえり”“手をつなごう”での力いっぱいの熱唱は、そんな絢香にとって、オーディエンスに向けての胸を張っての成長報告のようだった。

「ほんとにこのフェスは私にとって1年に1回の楽しみで、楽しみながらいろんなことを感じさせてくれる場所になっているんですけど。私も今年2月に初めてイベントというものを主催させてもらって、初めてイベントを主催することの大変さというのを感じたので、改めて今日はそういうものも身に染みながらやらせてもらってます(笑)。今日はとにかく大好きな空、緑、そしてみなさんにありがとうという気持ちを込めて一生懸命歌いたいと思います!」
続く“POWER OF MUSIC”は、絢香のMCにもあったように、今年の2月に彼女が「世界中の子どもたちの笑顔のために」をキーワードに、世界の子どもたちの現状を知ってもらおうと国際協力NGOセンターの協力のもと、絢香が尊敬するアーティストに自ら声をかけて武道館で行ったイベントのテーマソングでもあった。「音楽の力で何かができる」――そんな彼女の思いと強い意志が、ap bank fesのメッセージと共鳴しながら、灼熱の大地に広がっていった。

♪おかえり
♪手をつなごう
♪POWER OF MUSIC

絢香×コブクロ

「もう1曲絢香ちゃんは、絢香ちゃんの素敵なお友達と一緒に3人で歌ってくれます! 紹介します。コブクロ!」。
そんな櫻井のMCでステージに登場したコブクロ。
小渕_「というわけで、友達のコブクロです! 絢香ちゃんとは一昨年、1曲だけ“WINDING ROAD”という楽曲を作って昨年もここで歌わせてもらったんですけど、こうやって3人でやる時は『絢香×コブクロ』という名前でやってるんですが、ついにまた2曲目ができましたので今日はその新曲を聴いていただきたいと思っています。それでは聴いてください。“あなたと”」

 出演者の発表があった段階で多くのオーディエンスが予想していたコラボレーションだけに、サプライズというより、「待ってました!」という歓喜がフィールドを包みこむ。“WINDING ROAD”とは打って変わって壮大なバラードである今作。まだリリース前の楽曲だが、早くも新たなポップ・スタンダードの誕生を予感させてくれる名曲だ。

♪あなたと

コブクロ

小渕_「というわけで改めましてコブクロです!今年で3度目、呼んでいただきました。この場所に年に1回くるというのが僕らの中でもすごく楽しみになっていて、やっぱりここでしか起こらない奇跡みたいなものをみなさんもたくさん感じてると思いますが、僕らも感じています。今年もめいっぱい、みなさんと楽しませてもらいにきたので最後までよろしくお願いします!」

黒田_「みなさんが思っているより僕、緊張してます(笑)」
“蒼く優しく”“蕾”と、立て続けにバラードを歌い上げたコブクロ。ap bank fesではもうお馴染みとなった彼らだが、毎回毎回その楽曲の持つ普遍性に圧倒させられる。櫻井も、“蕾”のヴァースでは本当に気持ちよさそうに声を重ねていた。

小渕_「気持ちいいです! “蒼く優しく”と“蕾”という曲を聴いていただきました。どちらの曲にも空という言葉が入ってましたが、空を見てると本当にいろんな気持ちになります。10年前も、20年前もこの空の下に確かにいたはずなのに、気持ちで空の色が変わって見えるのかなぁとか。もしかしたら環境の変化とかで、空の色自体も変わってきてるのかなぁとか。でも、全部を吸い込んでくれる空にいろんな人がいろんな思いを閉じ込めていってて、それってきっと音楽のようにみんなのものなのかなという気がしてます。
去年、雲がどかなくて雨で中止という残念な報告を受けた方もたくさんいたと思うんですが、でも風が吹けば雲もどこかにいっていつか必ず晴れる。そんな思いを歌った歌がありまして。Bank Bandのみなさん、櫻井さん、みんなにこの曲を選んでもらったことをすごく嬉しく思っています」

そんなMCに続いて始まった“どんな空でも”では、曲の終盤に、黒田がMr.Childrenの“Tomorrow never knows”を、櫻井がコブクロの“永遠にともに”を、小渕がMr.Childrenの“花”を、それぞれ一節ずつ歌い合うという奇跡のよう一幕も!

♪蒼く 優しく
♪蕾
♪どんな空でも

布袋寅泰

 そして、まだまだ奇跡は終わらない! コブクロはステージに残ったまま、ここで今年のシークレットゲストの登場だ!
小渕_「僕の相方は193センチで日本のヴォーカリストでも大きな方なんですけど、次に紹介する日本を代表するロックンロール・ギタリストも、とっても背の大きな方です。きっとロックンロールの魔法でみなさんを包んでくれると思います。布袋寅泰!」

 颯爽とステージに現れた布袋寅泰と、黒田の間に挟まって「囚われた宇宙人やってみました(笑)」とおどける小渕。さあ、ロックンロール・ショーの始まりだ!

布袋_「ハローハローハロー! 今日はちょっとギタリストがたくさんいるみたいだから、ギターバトル行きますか! 覚悟はいいかね? コブちゃん?」
小渕_「全然できてません(笑)」
布袋_「覚悟はいいかね? 櫻井くん」
櫻井_「本当に2小節ぐらいでいいですからね!」
布袋_「はははっ! オーライ! 踊ろうぜぃ!」
 いやあ、とにかく一挙一動、一つひとつのセリフまで、すべてが完璧にキマってる。そして流れてきたギターのリフは、まさかのBOOWYの代表曲、“BAD FEELING”だ! ギュワンギュワン鳴りまくる布袋のギター。テクニックがどうこうというよりも、とにかくひとつひとつのフレーズ、ストロークの強度が異次元のすごさ。本物のジャパニーズ・ロックンロール・レジェンドを目の前にして、オーディエンスもステージ上のミュージシャンも興奮のピークに。そして見どころは、恐れ多いという気持ちを抱えながらも、果敢にギターバトルに挑む小渕と櫻井のギタープレイ。二人とも普段は激しいギタープレイをあまり見せないだけに、ものすごく貴重な光景がステージ上で繰り広げられていた。

 そして、この興奮の坩堝にはまだ続きがあった――。

櫻井_「コブクロに大きな拍手を! さぁ布袋さんもいる、亀田さんもいる。(布袋のギターと亀田のベースがリズムを刻み始める)このリズムなんか知ってる? 聴いたことある? もうひとり誰か足らない気がする。あいつが! あいつがここにクレバいんじゃない?」

 そう、ここでKREVAが浴衣に白いサングラスというぶっ飛んだ出で立ちでステージに再登場! 布袋×亀田×KREVAの3人が勢揃いして、映画『隠し砦の三悪人THE LASTPRINCESS』の主題歌“裏切り御免”の為に結成されたスペシャルユニットTHE Three、ひと夏の再結成が実現! ステージ狭しと熱いパフォーマンスを繰り広げる3人。特に亀田は、ここぞとばかりにステージの右端から左端へと走り回ってオーディエンスを煽りまくっていた。この時ばかりは、Bank BandがTHE Threeに完全にジャックされた。

布袋_「OK! 櫻井くん、もう1曲やらない? みんなで歌えそうなやつやらない?」
櫻井_「踊れるやつがいい。もうなんか暑いでしょ? いっそのこともう全部出し切っちゃったらいいんじゃないかな」
布袋_「ははは! やっちゃおうか。OK、カモーン!」

 そして3曲目に飛び出したのは言わずと知れた“POISON”! 布袋寅泰は圧倒的存在感と圧倒的ギタープレイをこれでもかと見せつけて、疾風怒濤のようにステージを去っていった。


「やっぱり目的のあるフェスじゃないですか。みんな集まって、ただただワイワイやるというのとはちょっと違う。でもその目的も大上段に構えず、音楽を大好きな連中が集まって、お客さんもステージの上も音楽愛に溢れてるっていう。そういう中に招いてもらって、非常に光栄だった。やっぱり気持ちいいですね。こういう太陽の下でやるのは。あんまり僕は太陽の下に似つかわしくないんだけど(笑)、本当に気持ちよかった。櫻井くんや、コブクロくんたちや、KREVAと一緒にやって。『後輩』っていうわけじゃないけど(笑)、なかなか音楽をやってる中で、こうしてお手合わせする機会はないから。こういう機会を与えてもらったことに、非常に感謝してます。たった3曲だったけど、みんなの心が一つになって音楽を奏でるっていう、このフェスの持っている素晴らしさをステージで感じました」

 出番を終えて、この日のステージについて語ってくれた布袋寅泰。そして、最後にこの一言を残してくれた。
「今日ここに清志郎さんがいないことだけが、すごく残念です」

♪BAD FEELING
♪裏切り御免!
♪Poison

Bank Band

そしてステージは、忌野清志郎が登場する予定の時間になった。Bank Bandが“スローバラード”を奏で始める。万感の想いを込めて歌い上げた後、櫻井和寿は次のようにオーディエンスに語った。

「もちろん知ってると思うけど、いろいろどうしようか考えました。それこそ今から演奏する曲を今日出演してくださったアーティストの方に声をかけてみんなで清志郎さんが演奏する、歌う予定だった曲をやろうかとも考えたんですけど、多分どんなに上手いシンガーも誰が歌っても清志郎さんには到底追いつかないし、清志郎さんだけの特別な声なので。そこで、どんなことをするのが一番いいのかなって考えて、今回はみなさんに歌ってもらおうかと思います。当然知ってる有名な曲です。たとえば僕が歌うより、みなさんの頭や心の中にインプットされてる、響いてる清志郎さんの声が最も清志郎さんの声だと思うので、その清志郎さんの声をこっち側に響かせてもらいたいなと思ってます。それで来年、今度こそ清志郎さんがこのステージで歌う日がくることを願いつつ、みんなでやりませんか?(客席の一か所を見つめながら)すごく嬉しいんだ、あれ。カメラさん撮ってるかな?」

ヴィジョンに、”Bank Bandの演奏、清志郎さんに届け”と書かれた、お客さんの手作りのボードが映し出される。

「そういうこと! そういうことなんだよ! みんなでやりましょう!」
ヴィジョンに流れる“雨上がりの夜空に”の歌詞。櫻井は客席にマイクを向け、舞台の左右を動き回る。そして、持っていたマイクをオーディエンスに渡す。マイクを手に取り、「清志郎さん帰ってきてねー!」と叫んだり、大きな声で歌い始めるオーディエンス。 「うめぇじゃねぇか!歌えるじゃねぇか!ありがとう!!」
そして次の曲のイントロが始まった。モンキーズの、そしてタイマーズの代表曲であり、忌野清志郎が「夢を見ること」の大切さを日本語詞にしたためた“デイドリームビリーバー”。櫻井とオーディエンスの歌声が、つま恋の空に響き渡った。

♪スローバラード
♪雨上がりの夜空に
♪デイ・ドリーム・ビリーバー


櫻井_「Bank Band最後の歌です。今から歌うこの歌が、このイベント終わってみんなが帰って来年のこのフェスまでなんとなく心のどこかに残ってて、時々心の中で響いて今この空気を感じれるように、最後お別れの歌をお届けします。“緑の街”」

言うまでもなく小田和正の名曲だが、今やBank Bandにとっても、「ここで鳴らさなくてはならない」大切な曲となったこの曲で、1部と2部合わせて計3時間半にも及ぶ、いや、3日間合わせて10時間以上に及ぶBank Bandのステージは幕を下ろした。

♪緑の街

GLAY

約30分の休憩をはさんで、ステージに現れたのはGLAYだ。出演アーティスト発表の段階で、今年のバンドアクトの中で最も意外性をもって受け止められたのはきっと彼らではないだろうか?日本で数少ない正真正銘のスタジアムバンドであり、10万人以上のオーディエンスを前に単独公演をした経験もあるGLAYだけに、このつま恋でも余裕で堂々たる雄姿を見せてくれるものと確信していたが、バックエリアにいたメンバーからはちょっとソワソワしてる様子が伝わってきた。
「つま恋のみんな! 初めまして! 思いっ切り盛り上がって行こうぜ! GLAY行きまーーーす!」
そんな初々しいTERUの最初のMCと、続く“VERB”の気合いの入りまくったパフォーマンスを見て気づかされた。結成から20年、メジャーデビューから14年を経て、日本の音楽シーンの頂点を極めてきた彼らは、この日のステージに、まるで新人バンドのようなまっさらな気持ちで挑んでいる。良きライバルであり続けてきたMr.Childrenの出番を待っているオーディエンスを前にして本気で勝負を賭けている。
「OK!今日は清々しいGLAYでいきたいと思います!“グロリアス”!」
誰もが知っている、その旋律、そのサビ、そのギターのフレーズの直撃を受けて、盛り上がりまくるオーディエンス。

「初めまして、GLAYです。ap bank fesのお客さんは本当にあったかいね!ありがとう!ステージに立つ前までは凄く緊張してたんですが、みなさんのそのあたたかい顔、徐々にじわじわと上がってくるその右手を見るたびに、俺の気持ちもどんどん上がってきてます。もっと右手を思い切り上げていきましょう!OK! ……といっても次はバラードなんですけど(笑)。
こうやって緑に包まれて音楽を楽しめる空間で、GLAYはいつも真っ黒い服を着てて、今回のイベントの中では違うかなという感じもしたんですが(笑)。でも、俺達は北海道の函館生まれで、小さい頃は近所のどぶ川にどじょうがいたり、田んぼにおたまじゃくしがいたり、そんな環境の中でずっと育ってきたんで、自然を愛する気持ちは同じです。今、この日本はどんどんどんどん悪いほうに向かっていると思うんで、俺達の力でなんとか前へ、明るい未来に繋げて行きましょう!OK!!」

そんな正直すぎるくらい正直で、まっすぐなTERUのMCに続いて鳴らされたのはこれまた彼らの代表曲のひとつ、“HOWEVER”だ!あの大きくて広いメロディの威力が、オーディエンスをひとつにしていく。

「本当にあたたかい!嬉しいわー。最高っ!やっぱりこうやって夏を一緒に体感できるのは最高に嬉しいし、こうやって汗を一緒にかくっていうのも滅多にないことだから、もっともっと汗をかいてみませんかー?思い切り暴れてみませんかー?」
そして始まったのは“彼女の“Modern…”、そして最後は“誘惑”だ!
何一つ持ち札を隠すことなく、5曲の中にも持てるすべてを出しきったGLAYは、鳴り止まない歓声を背に、ステージを去っていった。

♪VERB
♪グロリアス
♪HOWEVER
♪彼女の"Modern…"
♪誘惑

Mr.Children

照りつけていた太陽が西へと傾き、ようやく涼しい風がつま恋のフィールドをクールダウンさせた頃、ステージに現れた3日目のMr.Children。
ようやくここで、ライブリポートの中でこの3日間彼らが演奏した曲のリストを公開することができます。まずは、じっくりと以下のソングリストを見て下さい。

♪ラララ
♪HANABI
♪少年
♪雨のち晴れ
♪くるみ
♪フェイク
♪掌
♪Hallelujah
♪GIFT


“HANABI”、“少年”、そして“GIFT”と新曲3曲を含む全9曲。この新曲3曲を始める前に、桜井は必ず「聴いてもらいたい曲があるんだよ!」とオーディエンスに語りかけていたことからもわかるように、今やこのつま恋は、Mr.Childrenにとって「新しい歌」が生まれるきっかけとなる場所であり、「新しい歌」をまず最初に届ける場所でもある、本当の意味での「音楽の聖地」になったのだということを実感させられる。余計なことを何一つ考えす、今、本当に心から聴いて欲しい曲だけを純粋に演奏する場所。それが、Mr.Childrenというバンドにとってのap bank fesなのだ。
選曲に関しては、MCでこんなちょっと笑える一幕もあった。

「去年は台風だったし、今年もたぶん雨が降ることとか覚悟してたんで、どんな天候であっても盛り上がれるような選曲にしたいと思って、今からやる曲を選曲したんですが。やはりこれは日頃のなんちゃらですね。3日間、素晴らしい天候に恵まれ最高の笑顔を前に演奏できて、本っ当に幸せです。どうもありがとう!で、雨が降ったらこの曲でアゲてこうと思ったんですけど……雨って雨のことじゃないからね?」と語る桜井。
そこでMCの後ろで奏でられていた小林のピアノが止まる。「あれ? 止まったよ(笑)。やめなーい!! 雨って雨のことじゃないからね。よかったら一緒に歌ってください!」

そうして始まった“雨のち晴れ”。桜井はBank Bandでの“はるまついぶき”の時のMCをもじって上手く言ったつもりだったのだが、それが「上手くない」と無言のダメ出しを食らった格好だった。

「もうレコーディングしてる時からまさにこのつま恋の景色。前に笑顔があって音楽が流れてる、このつま恋でこの曲をやるのを凄い楽しみにしてました。まず、音楽を鳴らせる喜び、それから聴いてくれる人がこんなにたくさんいるっていう喜び。そしてその聴いてくれてるみんなが僕らの放った音楽をまた歌い返してくれたり、リズムとってくれたり、そういう音楽を通じた幸せのプレゼント交換を本当に大事にして行きたいと思います。3日間きてくれた方もいるでしょう。すごく大変な思いをして遠方からきてる人もいると思いますが、最後の最後にこの曲をしっかりと持ち帰って行って欲しいと思います」

そんな感動的なMCの後に始まった最後の曲“GIFT”の一音一音の響きには、この夢のような3日間の楽しさ、嬉しさ、そして大変だった思いや苦労まで、すべてが昇華されて溶け込んでいるかのようだった。
「来年もまたここで会いましょう!」
 桜井は確かに最後にそう言い残して、田原、中川、JEN(何故かおネエポーズでオーディエンスに手を振っていた……)、そしてギターとコーラスで見事に楽曲の奥行を与えていたサポートのナオト・インティライミと共にステージを去っていった。

to U

そして3日間の最後の最後を締めるのは、もちろんこの曲。
GAKU-MCからKREVAへの豪華なマイクリレーに続いて、絢香、平原綾香、akkoといった女性陣、そして櫻井、TERU、コブクロの小渕と黒田、ヨースケ@HOMEが歌い上げていくあの極上のメロディ。途中、平原綾香の高音のパートでは会場全体に感嘆のどよめきが巻き起こり、最後にTERUと櫻井が抱き合ってポーズをとった時には会場全体に笑いが巻き起こる、そんなこれ以上ないほどのハッピーエンド。
最後に、薄暗くなった夜空に打ち上げられた花火が「3日間の最後」であることを告げていたが、必要以上のメッセージやドラマ性や涙はない、3日間を通して演奏された素晴らしい音楽、ただそれだけがいつまでも心に残る、音楽が空気のようにそこに存在する世界で最も「自然体の音楽フェス」としてのap bank fesが「誕生」した瞬間だった。


終演直後の櫻井和寿、小林武史、両氏のコメントをもって、この3日間のライブレポートを締めくくらせていただきます。ここまで、3日間の長い長いレポートを読んでくれたみなさん、本当にありがとうございました!

櫻井_「全部終わってホッとした?いやいやいやいや、全然!今はもう、寂しい気持ちで一杯です。ああ、終わってしまったんだなあって。終わりたくないなあって。自分の声のコンディションは、初日からだんだん声が出てきて、2日目が一番良かったかもしれないけど、これだけやっても、まだまだずっとやっていたい気持ちです(笑)。今は本当に幸せ。それに尽きます。
音楽って、売る側からすれば、さも特別なもののように、そこに付加価値をつけて売る方がいいのかもしれないけど、本当は全然特別なものなんかじゃないって思うんです。どこにでもあるような大事なことを、たまたま音楽としてカタチになってるだけで。それが、こうして多くの人達に伝わるっていう。超常現象みたいなことを言うようですけど(笑)、このap bank fesっていうのは、本当にそこにあるもの、身近にあって常に感じてなくちゃいけないようなこと、常に見えてなくちゃいけないようなことを、音楽を通して再確認しているようなことなので。 ここ、つま恋には、そんな日常にある大切なことを、わかりやすくみんなに感じてもらえるようなあたたかい空気があるから。本当に、ずっと音楽をやっていたいって思えるんです」


小林_「本当に素晴らしかった!『こんなことをやりたかったんだ』っていうことが、やっと何の他の形容詞を使うことなく、そのままの純粋な気持ちとして自分でも『わかった!』っていう感じです。ただそこに曲があって、歌があって、演奏があって、それを奏でるっていうことなんです。本当にアーティストっていろんな側面があって、そういう人間が生き物としてキャッチできる何かを、Bank Bandという肉体を中心にして表現していくっていう、それだけと言えばそれだけのことなんだけど。それがようやくシンプルにできたっていう実感がありますね。もちろん、これだけ参加してくれるアーティストが増えたことで、やることも増えていってるけど、本当はもっとアーティストを増やしたい、もっと音楽というものの多様性を味わいたいって思ってるんです(笑)。
言葉でメッセージを伝えるっていうap bankの役割っていうのもあるけど、今年はそれがどんどん言葉を超えていっている実感を得ることができた。本当に今年はみんな素晴らしかった!」

宇野維正(MUSICA


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