Bank Band with Great Artists
秦 基博

秦 基博

「俺、この人の声になりたかった。すげえいい声なんだ」という櫻井のMCに導かれ、ちょっと照れたような表情で登場した秦 基博。
「つま恋、楽しんでますか!」という挨拶とともにアコースティック・ギターのフレーズが鳴り始める。
「アイ」。
美しく、大らかなメロディのなかで、人を愛することの切なさ、怖さ、素晴らしさを描き出したこの曲を、すべてのオーディエンスがしっかり聴き入っている。
蝉の声、風の音といっしょに、深い思いが込められた歌をじっくりと堪能するーーそれはまさに豊かな自然に囲まれたap bank fesならではの光景だろう。
「3.11の震災以降、愛とか、いろいろな言葉の意味が変わりました。ミュージシャンとして、人間として、これからどうやって生きていけばいいか考えて、すごく基本的なことだけど、シンプルに素直に生きていくしかないのかなって。そのなかには思いやりや”つながり”も含まれるんじゃないか、と」。
そんなMCのあとで披露された「水無月」からは、切実な祈りにも似たメッセージがダイレクトに伝わってきた。
そしてラストは櫻井とのデュエットが実現した「鱗(うろこ)」。
ドラマティックな展開と力強いダイナミズムを併せ持ったこの曲を、現在の音楽シーンを代表するふたりのボーカリストが声を合わせて歌い上げる。
この瞬間、この場所でしか体感することのできない贅沢な場面に対し、観客も大きな拍手で応える。
歌という表現の強さ、豊かさをたっぷりと体感できる、充実のステージだったと思う。

M1.アイ
M2.水無月
M3.鱗(うろこ)

(森朋之)