ap bank fes'07 現地レポート|7月15日(日)

鹿野さんによるap bank fesの即日ライブレポートを予定しておりましたが、 代わりに舞台裏を少しレポートしてもらいます。
7月15日(日) ap bank fes'07 2日目

テレビのニュースが台風の暴風域が静岡全般に到達せんとしていることを告げる中、つま恋の朝はやって来た。
しかし。
つま恋の朝から台風、および暴風域の気配はあまり感じられない。雨は降り注いでいるものの、その勢いは暴力的な脅威とは程遠い、穏やかさすら感じられるものだった。
そして11時頃には空の色がグレーからブルーに塗り代わり、静岡エリアのニュースもまた「大型台風が威力を弱めているようです。引き続き最大限の注意を計りながら、天候の変化に気をつけてください」と、トーンを弱める発言が目立ち始めていた。
そして。
12時頃、空は完璧な青空になり、遂に降り注いでいた霧雨すら立ち去り、まさ「台風一過」の晴天の姿を見せたのである。スタッフは、予想より早い天候の回復を前に、予定されていた本日のプログラムの変更を図って慌しく動き始めていた。

13時より、主要スタッフ・ミーティングが開まった。最終日開催に向けての調整ミーティングである。
最大の懸案は、ステージ復旧の仕込みに関してである。
昨日話し合っていた時の予想よりも早く台風が過ぎ去り、フィールドの状態が整いそうなので、当初考えていたよりも多くのことが復旧できるという判断が、それぞれのスタッフから告げられる。ただ、そのすべてが簡単に進むものではなく、クイックかつ冷静な判断が大切だし、何より参加者に向けて間違った応急処置をすることが一番悪しきことだという確認もされている。
最終日の天候は、台風一過のような晴天が予想される。その最高の1日へ向けて、今から約20時間で何ができるのか? 細かく的確に話し合われている。
セットはかなり復旧できるが、それでもディレイタワー(後方エリアへ向けられたPAスピーカーをセッティングする矢倉)とピンタワー(ピンスポット照明をセッティングする矢倉)の設置は、今からでは地盤のゆるさを含めて無理だという判断がなされる。
ミーティングには小林武史も参加し、スタッフに「一度完璧に組んだステージを壊し、そしてまた復活させることになり、何かと大変なことと思う。が、1日だけでも開催できることは素晴らしいことだし、それに向けて全力で頑張ってもらいたい。今から細かい演奏の時間割を作って行くが、できるだけ多くの曲の演奏を行いたいと思っている。かなりの暑さが予想されるので、休憩時間を適切に作って行かなくてはならないが、その中でできるだけ詰め詰めで行ければと思っています。よろしくお願いします」と、静かに檄を飛ばした。多くのスタッフも、「ようやく行ける。ようやく本領発揮できる」というテンションを発している。
空はさらに鮮やかなブルーを浮かべながら、真綿のような白き雲が泳ぎ回る幸福な景色を映し出すようになっていた。

ミーティング後、小林を中心に16日のステージ・プログラムが作られていった。既に発表されているように、最終日には、初日と二日目に参加する予定だった何組かのアーティストの出演が決まった。そのアーティストや出演するバンドにきっちりと演奏してもらえる環境を作れるのか? それができるならば、どの時間帯にお願いをするのか? そもそも開演時間は、そのままでいいのか? とことん話し合われる。いろいろなことがクイックに決められ、開演時間の12時から終演予定時刻の19時まで、16日に出演するすべてのアーティストの演奏曲が時間を逆算しながら決められていった。

14時30分。小倉博和(G)と登坂亮太(BACK Vo)がロビーで音合わせをしている。それを櫻井和寿とGAKU-MCが小林と共に見守っている。時に櫻井がコーラスと主線を使い分けてハーモニーを作る手伝いをしながら、小さなリハーサルが進んでいく。ちなみに曲は小田和正の“たしかなこと”。これは一体何のリハーサルなのだろうか?
その答えはすぐに出ることになった。それは――eco-reso campに来ていた人々のもとに1曲演奏しに行くという、小林がジャスト・アイディアで思いついたことを実行に移すためだった。
15時、campのためにつま恋に入っていたが、テントを張れる状態じゃないので体育館に場所を移して過ごしていた人々約60人のため、彼ら(小林、小倉、登坂、イシイモモコ(BACK Vo)、藤井(PER)、沖(VIOLLIN))は挨拶と共に1曲歌いに行った。まず、小林が参加者に挨拶をし、明日の開催の可能性が高いことを告げ、そしてメンバーが入り、“たしかなこと”が歌われた。
あの歓びの表情、そしてシフクの泣き顔――音楽の素晴らしさ、1曲だけで心の世界が変わる歓びが、体育館をあたたかく包んでいった。

15時30分、ミュージック・ガーデンで明日へ向けたリハーサルが始まった。
まずは小林から、明日へ向けた進行面のアレンジ、そしてライヴをできることの大切さがBank Bandメンバー全員に告げられる。そして初日と2日目に出演予定だったメンバーの中から何組かが、スペシャル・ゲストとして歌いに来ることがメンバーに告げられた。
そして15時45分、小林の「苦手な曲を優先してやって行きましょう」という一言から、リハーサルが始まった。

リハを観ながらあらためて思うこと、それは「音楽財産そのもののようなバンドだなぁ」ということだった。単純な話、日本を代表するプロデューサーである小林武史と亀田誠治が横に並んでいる、それだけで十分凄い。さらに、今年のフェスのために“よくきたね”という新曲をしらっと作ってしまう櫻井の素晴らしさは言うまでもなく、歴戦の兵であるギターの小倉を始め、壮絶なキャリアと「自分の音」を持っているバンドマンが集まっている。その彼らが「やるたびにどんどん独自のバンドとして育っていることが嬉しいし愛しい」と話すバンドが、Bank Bandである。
もちろん、リハーサルも穏やかな空気の中で、音楽の持つ確かな緊張感と真摯な姿を映し出す演奏が続いて行く。そんな中、「台風が過ぎ去ったこの素晴らしき1日を――」的なる櫻井の即興MCが抜群の空気を入れ込みながら、ゲスト・ヴォーカリストがいないリハーサル(ゲストがどんなに来ようとしてくれていても、基本的に新幹線の運転が再開していない中では難しいのが現状なのだ)は進んで行った。

17時、会場へと足を運んでみた。
多くのスタッフがステージ・セットおよび録音録画装置の設置のために動いていた。フィールドも一部は雨のために芝が弱っていて、その部分の補修を行ったりしている。昨日、いやこの日の朝までが嘘のような晴天の中、フード・エリアの設営を含めて、急ピッチで物事が動き出している。
今、つま恋は音を求めて、すべてが生き生きと育ち始めている。ap bank fes 07、たった1日だけのフェスティヴァルが、ウォーミング・アップに励んでいます。

それでは明日。参加される方は、くれぐれも体調管理と暑さ対策を十分に来場してください。こちら現在21時。リハーサル・スタジオからはMr.ChildrenのJENのドラムが豪快に鳴り響いています。グルーヴも上昇し続け、こちら絶好調です!

鹿野 淳(fact-mag.com

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ap BANG!




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