Bank Band with Great Artists
加藤登紀子

加藤登紀子

場内スクリーンに「7月18日」と今日の日付が表れる。時間を巻き戻すように、日にちをさかのぼり「3月11日」。震災の被害を伝える痛々しい映像。呼び込まれたのは加藤登紀子。
1曲目の「今どこにいますか」は、彼女が東日本大震災の被災者に向けた曲だ。映像を通して仙台のパブリックビューイング会場でこのライヴを見ている人の中には、まだ辛い生活を強いられている人がいるかもしれない。
この歌には「頑張れ」も「一人じゃない」も「大丈夫」という言葉もないが、「明日は必ず来るから、明日のために眠りましょう」と、優しく寄り添い背中をなでてくれる慈悲深い愛が溢れている。
「人間って、ちっぽけな生き物なんです。でもいよいよって時にすごく大きくなれる。みんなはまだ小さい?若いか(笑)。でも若いとか関係なく大きくなれる時がくるんだよ」。
MCでも言葉と言葉の隙間から生命力が湧いてくるような説得力ある言葉をくれる加藤登紀子。
「Seeds in the fields」では奇跡がおきた。
「人はみんな小さな種。芽を出して、空に向っていきます」と、曲紹介をして歌い始めると雨が降り出したのだ。それはまるで小さな種である私たちを大きく育てるように降り注ぐ恵みの雨。演出かのように曲の途中であっという間に上がってしまったが、ラストの「Power To The People」のエネルギッシュな大合唱は、あの奇跡のような雨がもたらした自然からの贈り物に違いない。

M1.今どこにいますか
M2.Seeds in the fields
M3.Power To The People

(大橋美貴子)