BankBand「はるまついぶき」
小林武史よりメッセージ

Bank Bandのオリジナル楽曲としては、「to U」に続いて2曲目となる楽曲が誕生することになりました。
タイトルは「はるまついぶき」。
今回は後述する理由により配信のみのリリースではありますが、これから秋になろうとしているというのに「はる」というのは、あまりに早いリリースと思うかもしれませんが、この誕生秘話を少し説明します。

はじまりは今年の暮れに公開される映画「ミッドナイトイーグル」の主題歌に僕がこの曲のメロディーをつくったことだった(今年の5月はじめぐらいのこと)。
その時はまだどのアーティストに歌ってもらうかも決まっていなかったのだが、この映画の中には、平和への願いや核兵器の問題、国や人としてなにを守っていくのかなどが描かれていて、個人的には憲法改正の問題にも関心があったので(主に憲法9条の捉え方に関して。あくまで個人的にですが、僕は憲法9条は平和憲法として守るべき派です)、ap bankとして未来のことを思った時に、決して無縁ではないと思えた。
櫻井くんにこの曲を聴いてもらったところ、「良いですね」などど言ってくれた。
彼は、映画の仮編集したものを見た後に、ある段階まで出来上がった歌詞を見せてくれた。それは映画のテーマなどにはぴったりだったけれど、Bank Bandとしては、確かに少し暗いようなイメージを持っていた(メロディーが暗いんですけどね……)。

その後、しばらく寝かせていたのだが、いい曲ではあるけれど
やはりBank Bandとしてやるべきかどうかの判断がつかず、ap bank fesの直前に二人で電話で話して、今回は映画の主題歌としては見送ろうという結論に達した(この段階では、映画のプロデューサーとも話し合って、主題歌に関してはもう少し時間をいただくことになったわけです。7月の、Bank Bandのリハーサル中のことでした)。

そうしてap bank fes'07が始まりましたが、みなさんご存知の通り、3日間中、前半2日間が台風4号の影響で中止になってしまった。
最終日は素晴らしい一日になったとは思うけれど、終った後は、やるせない思いが残ったままだった。
ちょうど最終日3日目の朝に新潟の方で地震が起こった。

つま恋から帰ってきたのがフェスが終った次の日(地震が起こって2日目の夕方)だったのですが、まだ台風の影響が残っていて、東京も大雨だった。
新潟も大雨だということをニュースで知り、被災地の方のやるせない思いが伝わって来るようだった。
すでに、その日の朝、スタッフからkurkkuでフェスで出すはずだったカレーが数千食、冷凍の状態で残っているということをメールで知らされていた。
フェスのために借りた道具(保冷車や鍋や釜やプロパンガスなど)を再び借りれば柏崎の方に行ってカレーをふるまうことができることが、スタッフと話し合ってわかった。
新潟の方の友人などから調べてもらったところ、柏崎ボランティアセンターと話がつながった。
食材を送ってもらうのは今は充分間に合っているが、炊き出しならば大歓迎ですという話をうかがい、次の日の朝、夜明けと同時にスタッフ7人で出発した。
炊き出しは3カ所で行い、喜ばれた……と思う。
その日だけでさばききれなかった冷凍カレーも、ap bankと仲の良い団体が2〜3週間残ってボランティア活動を続けていくということを聞き、相談したところ、喜んで預かってくれた (現時点ではほぼさばけたようです)。

僕らが向かった日に柏崎原発の使用停止命令が出た。
僕は炊き出しの合間に柏崎原発に行ってみた。もちろん中には入れなかったけれど、海沿いから眺めた。まだ震度5クラスの余震が来る可能性があるとラジオが伝えていたことも手伝ってか、とてもシュールな光景に見えた。
そういえば「ミッドナイトイーグル」という映画も核兵器の脅威がテーマの一つになっている。それと原発の核を並列にしていいということではないかも知れないが、人間を含めた自然はなにが起こるかわからないし、まして人間は必ず間違いを犯す生き物だと思う。そんな我々が扱うものとして核は危険すぎはしないかなど常々思ってはいる。現状すぐにとは言わないけれど(一概には言えないけれど、CO2を出さないという意味では原発は優れている側面もあるようです)、いつか核兵器も原発もなくてもよい世界になるように願う。

数日後、もう一度「はるまついぶき」のことを櫻井くんと話し合うことになった。
自然災害にあった自分たちやいろんな人たちのことを経て「はるまついぶき」が近く感じられるようになっていた。櫻井くんも同じような感じ方をしているようだった。

この曲をBank Bandで出来るだけ早く配信でリリースし、その収益の一部を、これを機につくるap bank基金に入れさせてもらい、その中から今回の新潟県中越沖地震の義援金として充てさせてもらうことを話し合った(映画のプロデューサーにこの件を話したところ、そういったリリースになったとしても、むしろ僕たちの気持ちに多いに共感するところがあると言ってくださり、ぜひ主題歌として使わせてほしいという話を受け、もともとこの映画のテーマともつながる部分も感じていたので、お引き受けすることにしました)。

音楽プロデューサー的に言うと当初は、いくらなんでも「はるまついぶき」を9月に配信するのは早過ぎるかなという懸念もあったけれど、次第に僕の中ではっきりとした絵が浮かんで来ていた。
それはやはり柏崎で見た光景だった。
たくさんの家が崩壊し、至るところで道路が損壊していた光景や、人々の姿を思い出した時にあの場所や、あそこで被害に遭われた人の視点からすれば本当に春を待つ気持ちを感じた。
加えて言わせてもらえるならば、ap bankにとっても、今回中止になったために見れなかった人たちの気持ちやフェスでの損害を思うと、それもまさに「はるをまつ」気持ちだった。
なんだかこの時期に、このタイトルで出すことこそがふさわしいように思えた。



長々と書いてしまいましたが、これが僕の視点から見える「はるまついぶき」の誕生秘話です。
秘話というには、そのまま流れを書いてしまいましたが、ガラス張りで伝えた方が一番伝わるかなと思いまして……。


みなさん、いい曲なのでぜひ聴いてください。
そしてダウンロードお願いします。

小林武史よりメッセージ 櫻井和寿よりメッセージ「はるまついぶき」PV視聴配信情報
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本作の収益金は、ap bankの活動資金に充当されるほか、一部についてはこれを機に設立する“ap bank基金”に入れられ、自然災害時の義援金などに充てられます。
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