Magazine

マガジン

VOL.14

2018.08.03

ap bank fes ‘18ライブレポート
~7月15日 (日)~
Text :鹿野 淳(MUSICA)
Photo:橋本塁(SOUND SHOOTER)/高田梓(SOUND SHOOTER)/中野幸英
ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
6年ぶりに静岡県つま恋に場所を戻しての開催となったap bank fes ‘18。 本開催日としての初日である7月15日。全国的な酷暑、しかも3連休の中日である本日が連休中で一番暑くなるとの報道が相次ぐ中、朝早くから参加者が駆けつけ、ap bank fesならではの「カラダにも環境にも優しい」ご飯や飲料を求めてフードエリアに集まって過ごしている。

その頃、楽屋エリアではBank Bandのメンバーが朝の朝礼ならぬ最終調整リハーサル&ミーティングを行い、それを観ながら東京スカパラダイスオーケストラが「なんて贅沢な朝食のBGMなんだ」と恐縮しながら、遅めの朝食を食べている。

このフェスのメインプロデューサーである小林武史に話を聞くと、「前夜祭の昨日も楽しかったんだよね。つま恋に久しぶりに戻ってきて、懐かしいとも思うし、まったく新しい気持ちもあるし。でも、何よりも穏やかにみんなでやれてるのがいいんだよね。だってさ、天気だってどうやらこの辺り(静岡県周辺)がちょっと気温が奇跡的に下がっている場所になっているらしいんだよ。そういうの含めて全部がいいよね」と機嫌良さそうにウォーミングアップを続けていた。

Bank Band

11時30分、開幕。まずはこのフェスの背骨でもあり名物でもある櫻井和寿をヴォーカルに据えたBank Bandによるサンデーモーニングセッション。
やはりこの声、そしてこの音で「よく来たね」と歌い響かせることこそが、何よりもap bank fesのメッセージそのものだと実感する。

2曲目ですでに櫻井はステージの右に、ギターの小倉が左に走り出し、芝生の上の3万人以上のオーディエンスも自分のペースでジャンプジャンプジャンプ! 今回のBank Bandのドラマーは2人。1人はおなじみのカースケさん、そしてもう1人は新加入、あのレミオロメンの神宮司!! 2人ともピンク色のシャツを着て絶妙なコンビネーションとグルーヴを叩き出している。そこに「幸せ!!」と叫ぶ櫻井のメッセージが被さり、もう1人ピンクのシャツを着たバンドマスターの小林が天から降ってきたかのようなピアノを奏でながらポップ・ミュージックを代表する「ビッグバンド」を見事に先導している。最初から音楽愛、そして音楽汗がつま恋に降り注ぐ最高のオープニングだった。

あらためて今年のBank Bandの素晴らしくも偉大なメンバーを紹介します。

小林武史(Keyboards、バンドマスター)
櫻井和寿(Guitar & Vocal, Chorus)
小倉博和(Guitar)
亀田誠治(Bass)
河村”カースケ”智康(Drums)
神宮司 治(Drums)
山本拓夫(Sax, Flute)
小澤篤士(Trumpet)
四家卯大(Cello)
沖 祥子(Violin)
イシイモモコ(Chorus)
小田原ODY友洋(Chorus)

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
Bank Band
M1. よく来たね
M2. 奏逢~Bank Bandのテーマ~

ナオト・インティライミwith Bank Band

「昨日の夜ちょっと話したんだけど、このつま恋に育てられたアーティストだって自分で思ってるらしいよ。だから、みなさんが育てたアーティストだと思ってください、そしてこれからも育ててやってください。紹介します、ナオト・インティライミ!」という櫻井からの紹介で「ただいまー! いつかきっともう一回、つま恋のこんな景色を見たいと思ってたの。そんな気持ちを込めて歌ってもいい?」という言葉と共に飛び出して来たナオトは。(天気の)暑さを(ココロの)熱さに換えるソウルポップを洗練されたBank Bandのトラックの上で気持ち良さそうに歌っていた。
その「歌から生まれる快活なビート感」に合わせて3万人の右手が左に右にずっと揺れている。ap bank fes 2018、開演から20分間で早くも一体感が完成した感を覚えました。暑いけど、暑いけど、太陽もこのフィールドに笑いかけている。

ナオトは「Mr.Childrenのバックコーラスをこのステージでやったのがちょうど10年前の2008年、それから先日10年かけて初めてサクさんとご飯を2人で食べに行かせていただきました(笑)」という話と共に、「東北も熊本もまだ大変なのに、こんな大変なこと(西日本豪雨)がまた日本に起こってしまったこと」を嘆きながら自分にできることを一つ一つやっていくという姿勢と覚悟を示し、「4日前に岡山の倉敷の真備に行ってきました。瓦礫撤去とか避難所とか回っていろんな人の話を聞いたんだけど、本当に、長い試練、長期戦になるなと実感しました。今から歌う曲のタイトルが”ハイビスカス”っていうんだけど、ハイビスカスってすごく派手な、南の島のイメージがあるじゃない?でも、実は1日花で、咲けるのって1日しかないの。その侘しさがすごく人生にも共通するところがあるなと思っていて。そんな人生の侘しさと、素晴らしさを歌ったこの曲をお届けしたいと思っています」と、“ハイビスカス”を真摯な表情で歌い続けた。
そして自身の最後のパートである3曲目は真っ向勝負のサンバポップ、“カーニバる?”! 卓越したスキルを持つBank Bandのメンバーの吹っ切れたようなサンバビートと伸びやかなサウンドがつま恋を煽り、みんながみんな強要されたわけでもなく自然とタオルを振り回し、新しい「音楽という風」を全員で吹かせていた。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
ナオト・インティライミ
M1. いつかきっと
M2. ハイビスカス
M3. カーニバる?

東京スカパラダイスオーケストラ

“日曜日よりの使者”というTHE HIGH-LOWSの名曲があるが、今日のような日曜日よりの使者とはまさにこういうバンドのことを言うんじゃないか!?と思う最強の助っ人が、今年の ap bank fesの一発目のゲストバンドとして登場した。
メキシコのフェスなど、世界各地のフェスでのヘッドライナーを務める「存在自体がパラダイス」な東京スカパラダイスオーケストラである。

「音楽にしか洗い流せない力があると思うんだ。だから今日も闘うように楽しんでくれよ!」という谷中のMCにオーディエンスも勇気づけられ、小気味のいいスカリズムを自分なりの解釈で楽しみながらステップを踏んでいる。 
7曲もの華やかで豪快で男気溢れるパラダイスを披露したスカパラだが、中でもこの日だけの奇跡のパラダイスが1曲披露された。それはーー櫻井和寿のゲストヴォーカルである。
櫻井がステージに姿を表すと、なんとその姿は先とは違い、目が覚めるような鮮やかなピンクのスーツに!!?? オーディエンスもただただ「ピンク!ピンク!」と文章にならない興奮した気持ちを口にしながらピンクに輝く1人のアーティストを唖然としながら指差している。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~

「どうも! (スカパラに)合わせて来ました! こんな光栄な機会もないから」と嬉しそうな、若干緊張しているかのような表情で櫻井が語り、「僕たちの大切な曲をお願いしました。“美しく燃える森”!!!」という谷中の煽りから始まった奇跡の1曲は、オリジナルとはまた異なる新鮮さが響き渡った。櫻井が魅せるスカステップも相当新鮮だったし、スカパラのメンバーが何よりもいつもとは違う興奮ゾーンの中でパフォーマンスしているのが素晴らしい。9人と1人——そのすべてがみんな幸せそう過ぎて、つま恋がポップに爆発しそうな雰囲気に満ち満ちている。
面白いのは、スカパラのメンバーが自然と櫻井のもとに集まり、そしてスカパラのメンバーが接近することで、櫻井の輝きがさらに増すこと。まさにこれはれっきとした一つのバンドなんじゃないか?と感じる。スカパラのメンバーの最高峰の「寄り添う力」と、櫻井の最高峰の「寄り添わせる力」の化学反応が見事に結実した瞬間だったと言えるだろう。
その後もアンセム連発で音楽を楽しむ勇気を高らかに鳴らし、つま恋をスカで本当に塗り替えて帰って行った。どこからどう見ても初出演とは思えない圧巻の30分間だったーー。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
東京スカパラダイスオーケストラ
M1. Paradise Has No Border
M2. Glorious
M3. 銀河と迷路
M4. SKA ME CRAZY
M5. 美しく燃える森 with 櫻井和寿
M6. DOWN BEAT STOMP
M7. ペドラーズ

YEN TOWN BAND

13時30分、気温32度。たおやかで涼しげな小林武史のオルガンに時空を超えたブルースギターを爪弾く名越由貴夫、そして動物的な感性そのものの野性味溢れるヴォーカルを絡ませるChara。伝説のバンドといっても決して大袈裟ではない、YEN TOWN BAND登場。
「重いのに軽い」、「潜っているのに浮いている」、音楽の魔法そのもののような演奏、そして曲が神秘的な何かを見つめるようなオーディエンスに降り注ぐ。

ホットパンツでオーディエンスを手玉に取り独特の魔力で時間をプロデュースするChara、そして時にギターを弾いたりもしながら音楽そのものと裸になって会話し続ける小林のプレイ。黙々と宇宙の果てから見たような心情を音にしてギターを爪弾く名越を含め、それぞれが独自の世界観を確立しているからこそ、バンドとして絡み合えるんだという「円熟した永遠の音楽の子供達」が、音楽と遊び、音楽に遊ばれている。ブルージーでもあり、80年代AOR的なソウルポップさもあり、さらにこのバンドが結成された1996年に世界中で旋風を巻き起こしていたオルタナティヴロック感もあるという、多様なポップミュージックの神秘と実験性を、円熟の域に達した鬼才(奇才?)がリラックスしながらプレゼンテーションしていた。

「なんかさ、眩しい目するとシミできるんですって。わたし小学校の時、紫外線について考えたんです。そしたらやっぱサングラスとかしたほうがいいんですって。日本人って『カッコつけてるんじゃない?』みたいな感じだけど、したほうがいいし。眉間をキュってやるじゃない?だから今日は開いてください。次の曲に全然合わない流れのMCしましたけどいいんです。みんな元気でよかった、倒れないでね。夜はみんな一緒にお月様とか見れるんですって、素敵ですね」というChara節が炸裂する。
サポートメンバーに村田シゲ(Ba)、吉木諒祐(Dr)、平岡恵子(Cho)を迎えたYEN TOWN BAND、「まさに今日がmy home townになった」と小林が話し、これからへの期待を寄せながら、最後の最後に日本の名曲でもある、“Swallowtail Butterfly~あいのうた~”を涼しげにプレイしながら、心の奥底から湧き上がる感動をつま恋に落として行った。この時ばかりはみんな、暑さを払ったりうちわで扇ぐより、この曲を全身で浴びるように、ある意味呆然と立ち尽くしていた姿が印象的だった。 「まだまだいっぱい出てくるから、ゆっくり楽しんでいって」と、まるでコース料理を作っている名コックのような一言を言い残し、バンド、そして小林が去って行った。そうか、実際にこのフェスの中でも小林の立ち位置は、まさに「コック」なんだなあと、あらためて実感した。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
YEN TOWN BAND
M1. Sunday Park
M2. Mama’s alright
M3. 上海ベイベ
M4. my town
M5. してよ してよ
M6. Swallowtail Butterfly~あいのうた~

佐藤千亜妃 with Bank Band

本日2回目のBank Bandのライヴは、ここから3組のソロアーティストが一気に登場することとなった。
櫻井の招きによって最初に登場したのは、きのこ帝国の佐藤千亜妃。過去にも2016年の石巻でBank Bandに出演したことがある歌姫は、小さな身体いっぱいでBank Bandの太くて繊細な音の一つ一つを自分のものにしながら威風堂々と歌い続けた。
佐藤の歌は歌謡曲的な大衆性を先天的に持ちながら、同時に不思議な妖艶さを常に醸し出すという解明できない魅力を持っているが、それがBank Bandの才気走ったトラックと絡み合うと、さらに音楽的な欲望が前面に出てきて、とても美しくも逞しいセッションが実現した。
最後にはずっと右手を高く高く掲げ続けながら、祈りを捧げるような表情でステージから降りて行った。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
佐藤千亜妃
M1. 太陽に背いて
M2. リナリア

Salyu with Bank Band

「この人が来ると一気にap bank fesを実感すると思います」という櫻井の招きで登場したのは、このフェス常連の最強ディーヴァ、Salyuである。もう、櫻井の一言だけでみんな誰が登場するのかがわかったほどのお馴染みなSalyuは、もはやこのフェスの音楽案内人のような安定感あるパフォーマンス、包容力、そして歌を響かせた。
彼女の魅力は、バラードだろうとダンストラックだろうと、生楽器だろうと打ち込みだろうと、すべてを一瞬にして解釈して解放させ、彼女の音楽にしてしまうところだ。だからこそ毎年彼女のパフォーマンスの時のBank Bandの演奏は、特別なまでに解き放たれている。今年もバラードからのクラブビート、そしてドンドコドンの祭囃子リズムと、奔放なリズム性を持つ3曲をプレイしたが、どれもこれも同じぐらい飛躍的かつ自由だった。

「去年の今頃は、東北にいました。小林武史さんが総合プロデュースしたReborn-Art Festivalに呼んでいただいて。わたしも長いこと、被災地の石巻に滞在しました。Reborn-Art Festivalは51日間開催だったんですけど、その最終日に「リボーンまつり」っていうのを地元の人たちと作ったんです。Rebornと盆踊りの『ボン』をかけて、可愛らしいタイトルで。子供達がワークショップで作った櫓が会場にそびえ立っていて、それを地元の人たちと囲んで歌ったり、踊ったり、魔法みたいな素敵な時間を過ごしました。次の曲はその時のお祭りの中で、盆踊りの曲として演奏した新曲をお届けしたいと思います」
ちょっと天然で先が読めないMCも彼女の魅力で——今年はいきなり本人も驚く展開の中でドラムの神宮司を紹介し、彼に1人で祭囃子のようなリズムを叩かせたり——これだけの常連&ディーヴァでありながら、毎年驚きに満ちたライヴを届けてくれるが、今年も裏切らないSalyuタイムをこのフェスならではのアットホームな空気の中でプロデュースした。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
Salyu
M1. VALON-1
M2. 風に乗る船
M3. 魔法(にかかって)

竹原ピストル with Bank Band

ソロアーティスト3組目は、今までの麗しさから一転、「華やかなお二方の後に、部活の顧問みたいなのが出てきてすいません。竹原ピストルです」と自ら名乗り、どこからともなく登場した。 1曲目は櫻井と竹原が横に並び、まず櫻井から歌い始めた。アコースティックギターを持たずに歌う竹原の姿はいつもと違ってとても新鮮だし、多くのライヴを独り弾き語りで行う彼がこれだけの分厚いバンドサウンドを従えて歌うのも、それ以上に新鮮だった。
櫻井との絡み合いにいたってはまさに男性ヴォーカル紅白歌合戦、いやいや、オールスター戦といったところか。「マイクが無線であるのをいいことに、これだけ櫻井さんに近づくのに成功しています」と会場を爆笑させ、櫻井と腕を組みながら、さらにソウルを震わせる歌と歌を組み交わし続けた。ここから何かが生まれるような、可能性だけが響くバンドメンバー含めた全員に名演という勲章を授けたいライヴだった。
それにしても下積み人生の長い竹原ピストルが日本を代表するポップマニフェストの演奏を背に歌うのは感動的だった。彼の懐の大きさをあらためて堪能した。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
竹原ピストル
M1. ぼくは限りない~One for the show~
M2. RAIN
M3. よー、そこの若いの

ROGUE

再びゲストバンドタイムに突入。
まずは櫻井の尊敬するバンドとしても知られる奥野敦士率いるROGUE。85年にデビューした、この中でも誰よりも先輩バンド。当時はまだロックはとことんロック、ポップはズブズブにポップという、両方が合わさることなど考えられなかった時代に、パンク性を持ったアクが強いビートロックバンドでありながら徹頭徹尾ポップだった、いわば90年代バンドブーム以降の先駆者的な存在のベテランバンドが登場した。
奥野は2008年に事故で半身不随となり車椅子生活を送りながらも、仲間とともに果敢にバンド活動を続け、自らのフェスをも群馬で開く未だアグレッシヴなアーティストだが、彼らをリスペクトする櫻井がエールを送り続けていることも知る人ぞ知る話である。

そんなROGUEが遂に念願の初出演を果たした。障害をものともせず、エッジがさらに磨かれた奥野のヴォーカルは、ある種の驚きをオーディエンスにもたらしていた。奥野のみならず他の3人のギター&ベース&ドラムもジャリジャリした角の立った音を鳴らし続け、「いろいろあるけど、それもこれも自分らの問題。関係ないことは関係ないこと、自分らは自分ら」という生き方を、カッコいい音にしたためて何度も何度も投げつけてきた。
2012年に出演を願ったがドクターストップによって出演できず、ならばと奥野のリハビリの映像を使って櫻井がap bank fesで奥野と仮想コラボレートを果たし、当時は解散していたメンバーがその映像を見て「奥野はまだ歌えるんだ」と知り、翌年に再活動を始めたというエピソードを披露し、感謝の念をap bank fesに捧げていた。

「これからも永遠に突っ走っていきます」という覚悟を言葉にし、その後バキバキ、ジャリジャリとしたガレージパンクをつま恋に浴びせ倒したがーー。
最後の最後に“終わりのない歌”で櫻井が登場。「やっと出てくれた、好きな曲ばかりやってくれた、すごいパワーだと思う」と喜びを全身で表した櫻井と、「あれがあって今があって、泣いちゃうかもしれないけど、遂に実現します、このセッションが」と奥野も全身で喜びを体現し、希望しか響かない名曲が届けられた。2人のストーリー、バンドのストーリーを感じたオーディエンスが、念願の夢が実現した瞬間を自分のことのように喜びエールを送っているのが素敵な時間だった。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
ROGUE
M1. MY HONEY
M2. LIKE A MOON
M3. BOY’S BE AMBITIOUS
M4. Good Times
M5. OVER STEP
M6. 終わりのない歌 with 櫻井和寿

Mr.Children

16時40分、まだ気温こそ下がらないが、風も出てきて西日が影を落としつつある中、久しぶりにつま恋に戻って来たMr.Childrenのライヴが始まった。キーボードのSUNNYを含めて5人全員が黒い服を着て登場し、まずは“HERO”からスタート。穏やかなビートとトラックの中で、生き続け成長する苦しさ、守るということは何なのか?という自己問答と残酷な日常を淡々と歌い鳴らす歌が、今の日本だからこそとても強く太く響く。
これは最早Mr.Childrenが出演するすべてのライヴでの光景だが、イントロが鳴った瞬間に、ほぼすべての人がどの曲かわかり、歓喜の声援が湧き上がる。バンドとかシーンとかポップとかではなく、Mr.Childrenが、いや、Mr.Childrenの曲がそれぞれの人生の「鏡」になっていることをこの日のライヴでも一曲一曲から知る。

「ちょっと、ゆっくりお水を飲みまーす。みんなも飲んで」と言いながら時間と空間を少しでも心地よいものにしようとコントロールする櫻井。
「久しぶりのつま恋、やっぱいいよ。そう思わない? このステージから見てるこの光景、これね、長い長い年月かけて、積み上げてきたものなの。だってさ、いわゆるロックフェスとかだと、黒い Tシャツとかいっぱいじゃん。そうじゃないんだよ、こんな鮮やかな、春みたいな、初夏みたいな、そんな爽やかな色が散らばっている、こんな綺麗な景色のフェスは本当に、自信を持って、このフェスだけだと思ってます。みなさんが長い間、時間をかけて作ったものだと、そういう風に思っています。かなり前、まだ「ap bank fes」が始まって間もない頃、この会場でこの曲を鳴らしたいと思って作った曲をお届けします。”彩り”」
それぞれがそれぞれであるため、そのそれぞれの日常にそっと寄り添う音楽、そんな音楽が一番ロックだし、強いんじゃないか?という意思を明確にした、ある意味Mr.Childrenの本質が一番露わになっている曲が、再び帰って来たつま恋に木霊した。

「ただいま」と笑顔で歌い鳴らすバンド、「おかえり」と笑顔で優しく歌い返すオーディエンス。いつもより少しだけ感極まった櫻井のこの歌が、久しぶりのつま恋でのap bank fesの時間を取り戻したように思える名演だった。
最後は「一番綺麗な色って何なの?」と歌い問いかける”GIFT“で終わった。セットリストの中で色の歌が多かったのは決して偶然ではないと思うが、だからこそ自らは皆黒い服を着て黒子になりきり、音楽自体の様々な彩りを楽しんでもらおうとした今のMr.Childrenは、かつてなく「曲のために、音楽のためにあるべき存在」になっていることを告げるライヴだった。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
Mr. Children
M1. HERO
M2. HANABI
M3. youthful days
M4. 彩り
M5. here comes my love
M6. fanfare
M7. himawari
M8. GIFT

RYUICHI,SUGIZO&INORAN(LUNA SEA) with Bank Band

さあ、いよいよ静岡県つま恋に帰って来たap bank fesの記念すべき初日が後半戦に入っていった。最後は夕暮れ時の3度目のBank Bandによるライヴ。今回は3パートに分かれ、RYUICHI,SUGIZO&INORAN(LUNA SEA)とのセッション、スガ シカオとのセッション、そして最後は櫻井自らがしめて3万人を送り出すというパートである。

まずはRYUICHI,SUGIZO&INORAN(LUNA SEA)。いわばバンド同士のセッションと言ってもいい異色のセッションが始まった。伸びやかで幻影的なギターが印象的な曲から始まり、次にプレイしたのが、LUNA SEAの中でも1,2を争う代表曲“ROSIER”。これがとても新鮮なダブ&レゲエアレンジで、ストリングスもブラスもコーラスもBank Bandならではのアレンジが響き、早くも両バンドの化学反応をたっぷりと味わわせてくれた。どうやらこの奇想天外なダブアレンジはSUGIZOからの提案だったらしい。

「僕は毎日海に行くんですけど、海に入っていると、すごくゴミが気になるんですね。こういうフェスを通して、海だけじゃなくて、次の世代、その次の世代にも、青い空、いま僕らが見ているような美しい世界を残したいなって思います。こういうフェスに呼んでいただけて、本当に光栄に思っております」とRYUICHIが話した後で、今度は震災以降のap bank fesにソロで参加しているSUGIZOのバイオリンが印象的な“I for You”を生々しくしっとりと歌い鳴らした。こうやってBank BandとLUNA SEAの3人のコラボレートを見ているとーーBank Band自体がそうなのだがーー2010年代というのは今まで交わらなかった人たちや音楽が混じり合った独特の10年間なんだなということをあらためて感じる。RYUICHIもMCで語っていたが、そもそもLUNA SEAの曲で、ライヴで、オーディエンスが両手を右に左にこんなにも大きく振るのは、とても新鮮な景色だ。愚直なまでに一途なラヴソングと向かい合ってきたバンドらしいタイトルの“LOVE SONG”、そのタイトル通りのストレートかつ大らかなバラードを、 Bank Bandはツインドラムをはじめとするフルセットで応戦し、完全に自分らなりの激しくドラマティックな「大河Jポップ」に仕上げていたのが印象的だった。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
RYUICHI,SUGIZO&INORAN(LUNA SEA)
M1. Hold You Down
M2. ROSIER
M3. I for You
M4. LOVE SONG

スガ シカオ with Bank Band

「凄かったね。Mr.ChildrenとLUNA SEAって接点がなかったんです。でも今回こうやって一緒にやって、なんで接点がなかったのかな?って(笑)。で、次は『(LUNA SEAの次ということに対して)なんていう出番になってしまったんだ!?』と言ってました。音楽界での一番の親友です。僕の腹黒い部分を出せる、そして僕より腹黒い(笑)アーティスト、スガ シカオ!」との最高の櫻井からのお迎えの言葉と共に、本日最後のゲストアーティスト、スガ シカオ、降臨。
何度も出演していることを含め、完全にゲストというよりホーム状態で入場し、実際のライヴでもまるでバンドのリーダーのごとくステージを仕切っていた。
仕切っているのは何もパフォーマンスだけではなく音楽的な部分もだ。スガ シカオのポップの基本にあるのは「ファンク」である。その重苦しく引き摺ったフリをしながらとことん跳ねたリズム、そんな黒人音楽の妙技をもちろんBank Bandの面々は完全にモノにしているわけで、結果的に最高のソウルショーをスガ シカオとバンドは繰り広げてくれた。とにかく音を、リズムを、浴びているだけでこんなにも気持ちが良くていいのだろうか?と思うほど、ディープでポップで快適で、だけどやはり腹黒い(笑)音楽タイムが進んでいった。
「みんな暑いけど大丈夫?ちょっと……走ったら息切れちゃった……。W杯観て俺もいけるかなと思ったんだけどやっぱいけなかった……。次は少ししっとりとした曲を歌おうと思うんだけど、この曲は親と子の絆っていうのをひとつのテーマに歌詞を書きました。俺の父ちゃんはね、すごいコミュ障で、15年も前にガンで亡くなっちゃったんで、俺のことどう思ってたかなんて、未だによくわからないんだけど、この曲歌うたびに、もしかしたら父ちゃんは俺のことこんな風に思ってくれてたのかななんて思ったりもします。お子さんがいらっしゃる方はぜひお子さんのことも考えたりしながら、聞いてください」と話した後で歌われたのが“砂時計”。

「春頃からだんだん櫻井くんと一緒に話し合って、何やる?みたいな、まるで学芸会みたいな会話をしながらやってみたいことを出し合ったりするんですが、今回は僕からこれをやりたいとお願いしました」と言って始まったのが、フジファブリックの“若者のすべて”。原曲よりもバウンシーかつビートが速い名曲が、ようやく夜になろうという、照明が映える時間帯にマッチしていた。終演後、スガ シカオは「暑過ぎて記憶がありません」と苦笑いをしていたが、これはきっとこの日の出演アーティストの大部分の気持ちを代弁しているだろうし、それでもみんながみんな、あれだけの演奏と歌、そしてパフォーマンスとソウルを表したのは、本当に音楽家の底力だと思う。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
スガ シカオ
M1. サヨナラホームラン
M2. コノユビトマレ
M3. 砂時計
M4. 若者のすべて

Bank Band

19時ジャスト。最後の最後、それまで2歩後方でゲストをホストするようにギターを弾いたりコーラスを挟んだりしていた櫻井が、再びセンターに登場し、マイクを握って歌い出したのは、キリンジの“Drifter”。バンドメンバー、そして櫻井の幅広い嗜好性、そして音楽愛を感じるセレクトである。
「みんなが最後、全部出し尽くして帰れるように、いっぱい手を振ったりできるような曲を選んできました。みなさんの旅が素晴らしいものであることを願いつつ、この曲をお届けします」と言いながら、カースケのジャングルビートにバンドメンバー全員の伸びやかな音が乗って、小沢健二の“僕らが旅に出る理由”が始まった。日本の名曲、ポップの再解釈。Bank Bandの音楽的な自由さ、快適さ、そして強さがとてもゴージャスに夜空に響き渡った。

そして。最後の最後は3曲連続でBank Bandのオリジナルソング。
「とうとうこの曲をやらなくてはいけない時間になりました。だから相方を呼ぶね、Salyu」と優しくオーディエンスに語り掛け、再度登場したディーヴァは一言も言葉を発さずに緊張感を発しながらあの歌を歌い始めた。このフェスのバイブルにして絶対的なメッセージソング、“to U”である。
小林のピアノがどこまでも、たとえ苦境の中にいる国々や人々にも届きそうなしなやかさを響かせ、そして今年「も」このフェスで、しかも今年「は」この場所で、この歌が聴けたことにみんな安心に近い感慨を覚えているように見えた。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~

櫻井とSalyuの師弟愛を超えた絶対的な大きな力しか感じられない優しいハーモニーを堪能した後で、最後の最後、本日の最終曲は、今年のこのフェスのために作った曲だという最新の1曲“MESSAGE—メッセージー”。今回は作曲に小林のみならず蔦谷好位置が、作詞に櫻井のみならずいしわたり淳治が参加した、Bank Band with Salyuとして異色のコラボレートソングだ。
歌の内容は上手く生きていけない、日常に追われた男女の、精神的なやり取りが歌になったようなデュエット。だけどどこか強く「原点回帰」の匂い、そしてこのフェスの音楽的なエネルギーの源泉を強く感じた。このフェスも、このメロディも、この歌詞も、そしてつま恋からも、明日を見つめ続け歩き続けたポップミュージックという「生き物」の原点、そして回帰を初日の8時間から堪能した1日だった。
「だけどもう一度、だからこそもう一度」
19時34分、終幕。最後に櫻井がBank Bandのメンバーを含めた全部の出演アーティストを紹介し、みんなで拍手し合いながら、今年のap bank fesという音楽祭、その初日が締めくくられた。

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月15日 (日)~
Bank Band
M1. Drifter
M2. 僕らが旅に出る理由
M3. こだま、ことだま。
M4. to U
M5. MESSAGE –メッセージ–

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月14日 (土)前日祭~を見る

ap bank fes ‘18ライブレポート ~7月16日(月)~を見る

index

TOP